ナナメの夕暮れ/若林正恭【読書ログ・感想】
前に南海キャンディーズの山里さんの書いた本について感想をつづった。
その本のあとがきを書いているのが山里さんの友人、オードリーの若林さんである。
というわけで、やっぱりこの2冊はセットかなと思い若林さんの著書の方も読むことにしました。
ちなみにまえがきにはこの本を読む注意点が書かれている。
生き辛いという想いを抱えていて、息を潜めて生きている人はもしよければお付き合いください。毎日が楽しくて充実しているという人は、今すぐこの本を元の位置に戻して、引き続き人生を楽しんでください。
このページも同じです。
毎日が楽しい人はそっと「戻る」ボタンを押してくださいな。
いったいどんな本なのか
本自体に興味があって手にとったわけではないから、そもそも開くまで本の内容をまったく知らなかった。
ちょっと長いけれど、帯に書かれている文言を引用する。
ぼくはずっと毎日を楽しんで生きている人にあこがれてきた。ずっと、周りの目を気にしないで自分を貫ける人にあこがれてきた。(中略)なんとか死ぬまでに、そういう人間になりたいと願ってきた。だけど、結論から言うとそういう人間になることを諦めた。諦めたし、飽きた。それが不思議なことに、「自分探し」の答えと「日々を楽しむ」ってことをたぐり寄せた。この本には、その軌跡が描かれています。(「まえがき」より)
もともと若林さんはこの本のタイトルに諦念とか諦めるという意味の言葉を入れたかったらしい。
しかし同時期に本を出した山里さんに先に使われてしまった(「天才はあきらめた/山里亮太」)。
それでこんなタイトルになったらしい。
この本は若林さんが「ダ・ヴィンチ」で連載していたコラムと、今回書き下ろされたものとの2部構成になっている。
コラムなので基本的には各話題について数ページ。
例えば、あんなもん絶対やるかと思っていたけどついにゴルフ始めちゃった、意外とおもしろい。みたいな。
なにがしかの出来事に対して考察したり、あるいはその出来事に対する自分の反応について考察したり。
頭の中で会話
まず最初の感想は、若林さんてすごく内省的な人なのかな、ということ。
「一人で平気なんですけど」という頁にはこうある。
こんな会話を頭の中でずっとしていた。
一人で居てもあまり寂しくないのは、自分と話しているからなのだ。
この自分の頭の中での会話というのはこの本の中にも繰り返し出てくる。
会話文として書かれているけれどこれは一人旅の話の途中だったような、とか。
あとがきにもこうある。
仕事や飲み会の後で、家で一人でいると頭の中がうるさすぎる。
だから、散歩をする。
別に黙っているから、ぼーっとしているから何も考えていないわけではない。
もちろん彼女とご飯を食べているときに頭の中で会話が始まって彼女の話を聞いていない、というのはどうかと思うが。
そうやって自問自答(とは少し違うのかもしれないけれど)しながら過ごしてきた厚みが、漫才になりコントになり、表現されるのだろうと思う。
正直な感想
もう一個の感想は、正直ちょっと読みたくないな、続きのページをめくりたくないな、と思ってしまったこと。
なんでだろうと考えてみた。
はたと気づいた。
たぶん、自分の中のそんなに好きじゃない部分が、若林さんに似ていて直視したくないんだ。
スタバでグランデを頼むのが恥ずかしい、という文脈で。
自意識過剰なことに対して、「誰も見てないよ」と言う人がいるがそんなことは百も承知だ。(中略)昔から言っているのだが、他人の目を気にする人は”おとなしくて奥手な人”などでは絶対にない。心の中で他人をバカにしまくっている、正真正銘のクソ野郎なのである。その筆頭が、何を隠そう私である。
正直山ちゃんの本の方は、見習うべきところはあるけれど、私はここまでクズではないと思って笑って読んでいられた。
この若林さんの本は、それが許されない。
「うわっ心当たりある・・・。」となって辛いのだ。
私もプライドが高くて自意識過剰。つい先日上司から「Sakura先生はまわりを気にしすぎだよ」と言われた。
気になってしまうのは、それを他人がやっていたときに自分が批判的な目で見てしまうからだ。
だから他人もそうやって自分を見てくるのではないかと思って周りの反応にびくびくしてしまう。
そしてそんな自分が私は好きではない。
なのにそれを直視させてくる。
だからこの本を読んでいるとページをめくる手が止まる。
もちろん、天才はあきらめたよりも時間はかかりながらも、ちゃんと最後まで読み切った。
似た者同士の二人なのかなと思っていたけれど、読後感は全然違う2冊だった。
おわりに
山里さんといい若林さんといい、不惑と言われる年代に突入している。
30代のSakuraからすると、正直まだあきらめきれないことがたくさんある。
自分はもっと明るく、ポジティブになれるんじゃないか、とか。
自分には才能があるんじゃないか、とか。
人の目なんて気にせずに生きていけるんじゃないか、とか。
たぶん二人ともそうやってあがいて、そして自分を受け入れて、の今の年齢、この2冊の本なんだと思う。
私はまだそこまであきらめきれない。
もう少しあがいていきたい。
あと10年たって、このナナメの夕暮れを読んでみたらまた違う感想になるんじゃないかと思いました。